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2025/04/14 15:59

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ナイフエッジ技法とは
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ナイフエッジ技法は、アーム(リングの腕)部分を中央に向かって鋭角に立ち上げ、まるでナイフの刃のような形状に仕立てるクラシックなジュエリーデザインの技法です。
横から見ると三角形、正面から見ると極めて細い線のように見えるため、金属部分の存在感を抑え、宝石が宙に浮かんでいるような軽やかさを演出します。


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見た目の美しさと構造の秘密
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一見するととても繊細で華奢な印象を与えますが、実は裏側(指に触れる側)はしっかりと厚みが取られており、100年以上の時を超えても耐えられる強度が確保されています。
この“軽やかさと堅牢さの両立”こそ、ナイフエッジ技法の大きな魅力です。

また、リングのショルダー(石座へ続く部分)にこの技法を取り入れることで、指へと自然に流れるようなラインが生まれ、指そのものを細く、美しく見せる効果もあります。

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歴史と伝統
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ナイフエッジは、ヴィクトリアン後半頃からエドワーディアン期(19世紀後半〜20世紀初頭)にかけて英国で盛んに用いられた技法のひとつです。
この時代はジュエリー作成時、細部にまで繊細な手仕事が施されたハイジュエリーが多く生み出されました。
ナイフエッジは、まさにその代表格ともいえる技法であり、特にダイヤモンドの輝きを際立たせる目的で多く使われました。
極細のアームと高い座に留められたダイヤモンドは、まばゆい光を反射し、ジュエリー全体の存在感をぐっと高めてくれます。

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現代にはあまり見られ無い贅沢な手仕事
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ナイフエッジ技法は、単に金属を細く仕上げるだけではありません。
まずは鍛造(たんぞう)と呼ばれる、地金を叩いて締める工程を行い、そこから一点一点手で削り、磨き、鋭角なエッジを形作ります。
非常に高度な技術と時間が必要なため、現代の大量生産のジュエリーではまず見られない、手作業ならではの技法なのです。
そのため、ナイフエッジが施されたアンティークリングは、当時の職人の技術の高さを感じられる芸術品のような存在でもあります。

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ナイフエッジのリングは、目にした瞬間にその繊細な美しさに心を奪われます。
けれど本当に素晴らしいのは、その美しさを遥かなる未来へ、時を超えて保ち続けられる構造と、そこに込められた職人の想いです。

目に見える美しさと、目に見えない強さ。
その両方を大切にしていた時代の贅沢な名残りを、ぜひ手に取って感じていただければ幸いです。


Daisy Ring
河原宝飾 門前仲町店